BARTENDER'S JOURNAL

一人でバーに入るのが不安なあなたへ|三宮の老舗バーが79年続けてきた「一人客との間合い」

JOURNAL

「バーに一人で入るのは、なんだか気まずい」

その気持ち、よく分かります。扉の重さ、静かな店内、常連らしき人の視線。一人だと、話しかけられたら気まずいし、かといって放っておかれても居心地が悪い。そのどちらも不安で、結局チェーンの居酒屋に入ってしまう——そんな経験、ありませんか。

神戸・三宮のSLICE BARは、1947年から79年間、この街でバーを続けてきました。その長い時間のなかで、私たちが一番大切にしてきたのが、実は「一人で来たお客様との過ごし方」です。

SLICE BARには、いろんな一人客が来ます

仕事帰りに一杯だけ寄る人。出張で神戸に来た人。何十年と通ってくださる常連。そして、初めて扉を開ける人。昼も営業しているので、旅の途中の外国人のお客様が、ふらりと立ち寄ることもあります。

一人で来た方の過ごし方も、さまざまです。カウンター越しにマスターと言葉を交わす人もいれば、待ち合わせまでの時間、静かに本を読みながらグラスを傾ける人もいる。誰かと来た方は、その方たちの時間を楽しんでいて、私たちは頃合いを見て、少しだけ会話に加わることもあります。

正解は、ありません。あなたが過ごしたいように過ごしてくれれば、それでいい。

「間合い」こそ、老舗バーの技術です

一人でバーに入る不安の正体は、たぶん二つあります。放っておかれる寂しさと、話しかけられる気まずさ。その両方です。

私たちがしているのは、そのどちらにもならないための「間合い」です。

お客様がカウンターに座ったら、まず様子を見ます。今日は誰かと話したい気分なのか、それとも一人で静かに飲みたいのか。会話を楽しみたい方には言葉を返し、そっとしておいてほしい方には、深く踏み込まない。かといって、放置もしない。

この見極めだけは、マニュアルにできません。79年間、数えきれないお客様をカウンター越しに見てきた店だからこそ、できることだと思っています。だから、安心してください。あなたが「話したくない日」に、無理に話しかけることはありません。逆に、少し誰かと話したい夜なら、私たちはちゃんとそこにいます。

隠れ家のような店で、自由に過ごしてほしい

SLICE BARは、良くも悪くも「隠れ家」のような店です。人通りの多い賑やかな場所ではなく、落ち着いた大人が集まる一角にあります。だから、大混雑することはあまりありません。

その空いた店内を、どうか自由に使ってください。200本を超えるウイスキーを眺めながら一杯選ぶのもいい。他ではもう飲めない古いボトルの話を聞くのもいい。ただ黙って、時間が流れるのを味わうだけでもいい。

私が店を続けるうえで、ずっと掲げているコンセプトがあります。

「来店したときよりも、心晴れやかになって帰っていただく」

一人で来たあなたが、少しだけ軽い足取りで扉を出ていく。そのために、この店はあります。

初めての一杯を、SLICE BARのカウンターで。どうぞ、気負わずにいらしてください。