バーのメニューを見ても、何を頼めばいいか決められない。
そういうこと、ありませんか。
知らない名前が並んでいて、選びきれない。 結局、いつもと同じものを頼んでしまう。
でも、決められなくて、いいんです。 あなたに合う一杯は、こちらで選びます。
神戸・三宮で1947年から続くバー「SLICE BAR」から、バーテンダーが一杯を選ぶ、ということについてお話しします。
気分を伝えるだけでいい
メニューを決められないなら、決めなくて大丈夫です。
そのかわり、今の気分を、教えてください。
「甘いものが飲みたい」 「さっぱりしたものを」 「今日は疲れたので、軽く」
その一言があれば、こちらで一杯を組み立てます。
お酒の名前も、知識も、要りません。
むしろ、名前を指定されるより、気分を教えてもらうほうが、その日のあなたに合った一杯を選べます。
決めてくるのは、飲みたいお酒ではなく、今日の気分。 それだけで、十分です。
同じ言葉でもその人に合わせて変える
面白いもので、同じ言葉をもらっても、選ぶ一杯は、人によって変わります。
たとえば「さっぱりしたものを」と言われても。
その人が、暑そうにしているのか。 少し疲れているのか。 これから長く飲みたそうなのか、一杯で帰りそうなのか。
その様子によって、選ぶ一杯は、変わってきます。
マニュアル通りに、「さっぱり」ならこれ、と決めているわけではありません。 目の前の、あなたに合わせて、選んでいる。
同じ注文でも、その日のあなたに、ちょうどいいものを。 そこを考えるのが、こちらの仕事です。
選ぶためにあなたを見ています
一杯を選ぶ前に、こちらは、お客さんを見ています。
今日は、一人で静かに飲みたい日なのか。 少し、話したい気分なのか。
疲れているのか。 何か、いいことがあったのか。
そういう様子を、さりげなく感じ取りながら、一杯を選んでいます。
だから、ただ注文を受けて、その通りに作っているのではありません。 あなたのその日を、少し想像しながら、ちょうどいい一杯を探している。
それが、バーテンダーの、いちばん大事な仕事だと思っています。
これは機械には選べない一杯です
ボタンを押せば、同じものが出てくる。 それはそれで、便利です。
でも、バーの一杯は、それとは違います。
その日の、あなたを見て。 その気分に、その様子に、合わせて選ぶ。
同じ「甘いもの」でも、その日のあなたに合う甘さは、毎回少しずつ違う。 それを選べるのは、人が作っているからです。
あなたに合わせた一杯を選ぶ。 その手間と気配りこそが、バーで飲む一杯の、いちばんの価値だと思っています。
決めてこなくて大丈夫です
だから、バーに来るとき。 何を頼むか、決めてこなくて大丈夫です。
持ってきてほしいのは、その日の気分だけ。
疲れた、楽しかった、ゆっくりしたい、さっぱりしたい。 それを教えていただければ、あとは、こちらで選びます。
その日のあなたに、ちょうどいい一杯を。 SLICE BARのカウンターで、お待ちしています。
ご自身の言葉で伝えたいときのために、メニューのない空間でとカクテルの頼み方を用意しています。
最初の一杯に何が表れるのかは、最初の一杯の心理学へ。