「オーセンティックバーには、難しいルールがたくさんありそうで怖い」
そう思っていませんか?
確かに、バーにはいくつかの「暗黙の了解」が存在します。
しかし、それは決して「お客様を試すため」や「格式張るため」にあるのではありません。
すべては、そこにいる全員が、心地よい時間と空間を共有するための「思いやり」なのです。
今回は、知っておくと一目置かれる、そして自分自身も恥をかかずに済む「バーでのスマートな振る舞い(NG行為)」について、少し詳しくお話ししましょう。
入店から着席|最初のボタンを掛け違えないために

扉を開けた瞬間から、バーの時間は始まっています。
まずは入り口での振る舞いです。
NG1. 勝手に空いている席に座る
「あ、あそこが空いてる!」と、スタスタと奥の席へ座ってしまう。
これは、実は最も避けたい行為の一つです。
【なぜNGなのか?】
一見空いているように見えても、そこは「予約席」かもしれません。
あるいは、毎日その席で一日を終える常連様のために、暗黙のうちに空けてある席かもしれないのです。
扉を開けたら、まずはスタッフと目を合わせ、案内されるのを待つ。これが「大人の余裕」です。
NG2. 5名以上の大人数でいきなり押しかける
二次会などで盛り上がり、大人数で突然来店されるケースです。
【なぜNGなのか?】
オーセンティックバーは、静寂を楽しむ場所です。
そこへ大人数が一度に入ると、お店の空気が一変し、他のお客様の「静かな時間」を壊してしまう恐れがあります。
3名様以上、特に5名様を超える場合は、来店前に一本お電話をください。
「今から5人いけますか?」
その配慮があれば、バーテンダーも席の配置を工夫して、皆様を歓迎できます。
空間を壊さないために|美しい夜の過ごし方

席に着いたら、次は「空間」との調和です。
NG3. 大声・泥酔・一気飲み
バーは居酒屋とは異なります。
「酔うため」ではなく「味わうため」の場所です。
【なぜNGなのか?】
BGMや氷の音よりも大きな声は、バーの主役である「雰囲気」を台無しにします。
また、コールをしての一気飲みなどは論外です。
お酒と作り手への敬意を忘れず、自分のペースでゆっくりとグラスを傾けてください。
NG4. 強い香水のつけすぎ
これは意外と知られていない、しかし非常に重要なマナーです。
【なぜNGなのか?】
ウイスキーやカクテルは、「香り」を楽しむ飲み物です。
繊細なフルーツの香りや、熟成された樽の香りは、強い人工的な香料(香水や柔軟剤の匂い)にかき消されてしまいます。
バーへ行く日は、香水を控えるか、ごく控えめにするのが「粋」な嗜みです。
これを知っていれば上級者|グラスと所作のタブー

最後に、手元の所作について。
ここを抑えれば、あなたはもう初心者ではありません。
NG5. グラスを強くぶつけて「乾杯」
「カンパーイ!」と勢いよくグラスを合わせる。
居酒屋のジョッキなら豪快で素敵ですが、バーでは危険な行為です。
【なぜNGなのか?】
バーで使用しているグラス(バカラや木村硝子など)は、口当たりの良さを追求するために極限まで薄く作られています。
軽くぶつけただけで、欠けたり割れたりすることがあるのです。
バーでの乾杯は、グラスを目の高さに掲げて、相手と目合わせるだけ。
音を立てない乾杯こそが、最もスマートで美しい乾杯です。
NG6. カウンターに無造作に物を置く
スマホ、財布、タバコ、ハンドバッグ……カウンターの上に所狭しと並べていませんか?
【なぜNGなのか?】
バーのカウンターは、一枚板の美しい木材で作られていることが多く、傷つきやすいものです。
また、そこはバーテンダーがカクテルを提供する「舞台」でもあります。
手荷物はカゴやフックへ。
カウンターに置くのはグラスと、自分自身だけ。
それくらいの潔さが美しく映ります。
NG7. 無断で他のお客様を撮影する・ナンパする
SNS用に写真を撮りたい気持ちはわかりますが、他のお客様が写り込むのは絶対NGです。
【なぜNGなのか?】
バーには「お忍び」で来られている方もいれば、一人で静かに考え事をしたい方もいます。
皆様のプライバシーを守るのも私たちの仕事です。
写真撮影は「自分のグラスだけ」、そして一言「撮ってもいいですか?」と聞くのがマナー。
もちろん、しつこいナンパ行為も、その場の調和を乱すため厳禁です。
【番外編】でもSLICE BARなら大丈夫なことも
ここまで「ダメ」なことばかりお話ししてしまいましたが、最後に少しだけ弁解させてください。
「SLICE BAR」は、創業78年の歴史の中で、様々なお客様を受け入れてきました。
一般的にはNGとされることでも、当店ではOKとしていることがあります。
- タバコ・シガー(葉巻):
「全席喫煙可」です。換気設備を整えておりますので、煙の行方に少し配慮いただければ、心ゆくまで紫煙を燻らせてください。 - 服装(ドレスコード):
「ジーンズ・スニーカー」でも清潔感があれば全く問題ありません。お仕事帰りでも、休日の散歩ついででも、どうぞお気軽に。
失敗しても素直なら「可愛いお客様」です

ここまで読んで「やっぱりバーって面倒くさい」と思われたでしょうか?
大丈夫です。
これらすべてを最初から完璧にこなせる人はいません。
もし知らずにNG行為をしてしまっても、私たちバーテンダーが優しくお伝えします。
その時に「ごめんなさい、知らなかったんです」と素直におっしゃっていただければ、あなたは私たちにとって「愛すべきお客様」です。
マナーとは、形式ではなく「心」です。
他のお客様への少しの配慮さえ持っていれば、神戸三宮の夜はあなたを優しく歓迎してくれるでしょう。
今夜、少しだけ背筋を伸ばして、ぜひSLICE BARの扉を開けてみませんか?